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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


そして、その三時間後………。



「ナルス殿、大丈夫かしら。しっかりなさってくださいませ……!」

一度ゴブレットを置いたヴァリスが、その腕に指をかける。



「んんんー? その声はアリエ殿ではありませんか……!

さぁ……私の傍においで。抱きしめて差し上げます」



「きゃっ……! い、いけないわ、ナルス殿ったら。

しっかりして頂戴……!」



「ナルス、アリエ殿に近づきすぎだ」

その手のなかのゴブレットを奪い、ぐい、と一気に飲み干したのはボスキだった。

そんな彼をみて、すこしばかり不満そうに淀む互い違いの双眸。



「アリエ殿〜、そんな仏頂面より私のほうがいいでしょおぉ……。」

へろへろに酔ったその瞳が熱を閉じ込めみつめている。

普段ならばなにかを隠すように、

瞳を覆っている透けるようなヴェールが、酒に酔うことですっかり取り払われていた。



「あんたは飲みすぎだ」

ぺしっ、と額を弾くと、己のワインも飲み干した。



「ベリアル、それ以上飲むのはもう無理だろう。

負けを宣言して、休んでいたほうがいいよ」



「いえ……ルシウス殿、そういう訳には………、」



「目の焦点が合っていないし、フラフラじゃないか。

限界が来ているのではないのか?」



「ベリアル殿、ルシウス殿の言う通りよ。

貴方……元々お酒に強くないでしょう」

ヴァリスも口を揃えるけれど、頑なにゴブレットを離さない。



「いいえ、アリエ殿もこのように奮闘なさっておいでなのです。


私も貴女を見習わなければ……はい、アリエ殿、

大丈夫です。ベリアルはまだまだ頑張ります……!」



「それはアリエ殿ではなく囚われびとの聖像なのだけれど」

泥酔したベリアンは、先ほどから傍の聖像に話しかけているのである。
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