第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
「アリエ殿……お時間です」
彼女が今日伴っているのは、ベリアンとボスキ、ルカスとナックの四人だ。
それには今回の依頼内容が関係している。
「月の廃園」は、この世に未練を遺して逝去した者たちの為の、
いわば鎮魂と祈りを捧げ、弔うための古城だ。
死者の魂が還ると云わるいわく付きのこの古城には、ある噂が流れている。
(『廃園(あそこ)には、怖いほど綺麗な魔物がいる。
息を呑むような美しい容貌の下に、荒涼とした寂しい心を抱えた魔女がいる。
屍人の魂を管轄する役目を担う彼女は、
時折気に入った者の肉体から美しいゴーレムを創り出し、
彼らはみな、まるで彼女が女王のように傅いている』………。)
思わず胸元を握りしめると、
その仕草に気づいたボスキが、そっと、その頭に軽く手を打ち付けてきた。
「!」
おもてを上げると、ニヤリと狡猾そうな笑みをとらえる。
「心配いらねえよ。
魔女なんて、この世にいる筈がないんだからな」
ヴァリスの脳裏に、グロバナー家当主その人から直接聴いた依頼内容がよぎる。
「魔女との接触……ですか?」
「そうだ。月の廃園で妙な噂が流れていてね。………君には、その真相の解明を頼みたい」
「……わかりました」
「あぁ……よい結果を期待しているよ……『主様』」
「は、はい」