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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第16章 月嗤歌【All Characters(別邸組)✉*♟】


ヴァリスはグロバナー家の所有する別荘の窓から外を眺めていた。



外は大粒の雨が降りしきり、

立ち込める切りが庭園の薔薇たちに霞のようなヴェールを授けている。



彼女はグロバナー家当主の実妹、アリエに扮していた。



悪質な手法で貴族の令嬢たちに

いわく付きのドレスを売り捌く仕立て屋、「レビ」の捕縛が今回の依頼内容だからだ。



「……アリエ様」


深い青の瞳に映える紺碧色のドレス。

裾にスパンコール付きのチュール地を重ね、人魚の鱗のような輝きを持たせた盛装だ。



レースとリボン使いが上品なボディスは華奢な身体の線にぴったりと沿い、

スカート部分は多重の花を逆さまにしたように愛らしい形状をしていた。



上質で可愛らしい意匠を着こなし、

髪は彼女自身の彩色を際立たせるよう結い上げて後れ毛を散らす。



程よくひらいた襟ぐりは繊細なレースに彩られ、

そこに水晶の粒がドットを描くように縫い付けられており、

蝋燭の灯りに照らされてほのかな煌めきをみせていた。
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