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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第14章 真綿の業【All Characters(地下1階組) ✉*】


「心地良いかい……?」

常ならば冷たいひかりを放つ瞳が、彼女を映すことで柔く解けている。

そのさまに胸が酷くさざめいた。



「ぁ……っや、そんなこと……聞かないで………っ! あんっ」



「なんだか面白くない気分ですねぇ」
そう呟いたのはラトだった。



彼女をみつめる瞳はどこまでも深く、吸い込まれそうに淀んでいた。



「私もここにいることを……忘れないでください」

快楽に沈む瞳が、朧げに彼を映す。



びくりと身を震わせ、その唇がひらいた。



「忘れてなんて………っ! っラトぉ……貴方も、………きて」

白くたおやかな手が、誘うように差し伸べられる。

その惑わすような瞳に、気づけば口付けていた。



「ん………あぁ、」

ちゅ、ちゅる……と何度も触れ合わせる。

ミヤジやフルーレとは違う、単純に唇を重ね合わせるキスに、彼女の胸が痺れた。



「愛しています」

その言葉を告げたのは誰なのか。ただ果てのない蜂蜜の沼に溺れていった。
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