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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第14章 真綿の業【All Characters(地下1階組) ✉*】


それは、とある秋の昼下がり。
屋敷の自室で本を読んでいると、ふいに叩扉をとらえた。



「どうぞ」
開いていた本に栞をはさみ、応えると。



「失礼するよ」
静かな靴の音とともに、「彼」が姿をみせる。



「ミヤジ……どうしたの?」

珍しい来客に、柔らかく微笑みかける。

常ならば冷たいひかりを放つフローライトの瞳が、彼女を映すことですこしばかり和んだ。



「主様、貴女あてに依頼が来ているよ」



「! 誰からなの?」
そっと彼を見上げる瞳は柔く、穏やかに煌めいている。



「ひとまず、私達の執事部屋へ来てくれないか。

………依頼についてもそこでお話しよう」

そう告げて、片手を差し出す彼。一抹の罪悪感に、気づかぬ振りをしたまま。



「? わかった」

何も知らないヴァリスは、彼の内で渦巻く混沌にも気づかずに微笑う。

その表情はあまりに無邪気で、彼の内をさざめかせた。



「では……いこうか」



「うん」
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