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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第14章 漆月☩しづき☩の惑い【🗝 ⇆ 主 *】


「ナッ……ク、」



「ん……あんたの肌は甘いな………。それに……馨しい香りもする」

ふふ、と笑い交じりの声が乳首を擽る。

そのまま薄い唇に覆われた。

吸引され、舌先で捏ねられて、細い肩が震える。



「やっ……そんな訳っ………! ひぁっ」

ざらりざらりと舌がふれて、口にしかけた言葉が消える。

彼の服をつかむ指先に、一層力が籠った。




「嘘じゃない。………あんたの芳香が、たまらなく俺を惑わせるんだ」

おもてを隠す手を、指先を絡めるようにして繋いだ。



頬を染め上げ、雫をたたえた瞳。

ぞくりと戦慄が駆け抜け、愛しさのまま唇を重ねる。



「ん………ぁ、」

くりくりと胸の先を虐めながら、彼女の艶音を呑み込んだ。

時折うすく開かれる濡れた瞳は、酷く扇情的で。



「……ヴァリス様、」

名前を呼ばれ、きつくきつく包み込まれる。

さらさらとした髪が肌を滑り、その些細な刺激にすら胸の奥がさざめいた。



「ナック……?」

けれどわずかに触れるその身は、別の感情を伝えてきた。

ちいさくとも温かな手が頬に触れ、青い瞳のなかに吐息を封じた自分の姿が映る。



「なんでもない」
そう言って微笑って見せたけれど、その手が彼の首元を近づけ………。



「ん………。」
触れるだけのキスをくれた。



「大丈夫……。私はいなくならないよ」

微笑うそのおもてから、零れそうな優しさ。

彼の背に腕をかけ、抱きしめ返してくれる。



「(嗚呼……!)」

たまらない想いがして、唇を重ねた。



舌先で彼女の唇をなぞると、彼女が力を抜いた。

そのまま口内へと滑り込ませて、からめ合っていく。



「ん………ふ、」

触れあわせた唇の隙間から、厭らしい水音が零れる。

ぴったりと抱き合うと、重なる全ての部分から彼女の感情が伝う。




自分を案じ、包み込むような温もり。

さらにきつく抱き寄せて、互いの熱を分かち合った。
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