第2章 ハート海賊団
………
暗い部屋に独りでいた
(ここは、どこ…?)
動こうとしてふと足に違和感がある
ジャラ…
(あ……)
冷たい鎖が足に繋がっている
(そうだ、私……繋がれているんだ)
ふと、背後に気配を感じる
目を向けると、父親と母親がいる
(父様…母様……っ)
“日に日に娘から女になっていくのぉ…なぁ、あやめ?”
目の前にいる父親の顔が、目が、妖しげに笑う
“分かるか? お前は男を魅惑するのだ、だからこの父でさえ…お前に、触れたくなる…”
(い、いや…っ!!)
この顔を、自分は知っている
あの日、あの部屋で、向けられた顔だ
忘れられない忌まわしい記憶
手を掴まれ、帯を引っ張られ、着物を乱していく
白い肌が晒されて、あやめはあられもない姿にされていく
必死に抵抗している自分に、母親は何も言わない
寧ろ、軽蔑するような、汚いモノを見るような目を向けているだけ
(どうして…っ、助けてくれないの?母様…っ)
“…穢れ子、己の体で誘惑でもしたのか?穢らわしい…”
刃物のような言葉を突き刺して、母親は知らない男性の腕に自身の腕を絡ませながら消えていく
(どうして……なんで、なんで…)
自分の記憶に微かにある優しかった両親などいやしない
目の前の現実が物語っている
(私は…父親にとって欲望の人形
母親にとっては、穢らわしい娘なのね)
ポタッ……
誰も、愛してくれない、私を私として見てくれない
辛い
辛い
悲しい
哀しい
寂しい
淋しい
(もう…私の、帰る場所なんて…居場所なんて、ないんだわ…)