第4章 欲しいモノ
どうせ、今更帰ったところで屋敷から逃げた事には変わりない
その事で父親の逆鱗に触れる未来は容易に想像出来る
そしてまた、足枷を付けられ離れに一人でいさせられる
いや、それよりももっと自由が無くなるかもしれない
今度は何されるか分からない…
帰りたくない、屋敷に、自分の国に
でも、こんな世間知らずの小娘が一人で生けていけるか?
不安で胸が押しつぶされそうになる
これ以上ロー達の足手まといになるのは申し訳ない
負の感情がぐるぐるとせめぎ合って呼吸が乱れる
「居場所がねぇなら、ここにいればいい。俺たちがお前の居場所になってやる」
「さっすがキャプテン!!」
「そうっスよ、俺たちみんなあやめの仲間なんだぜ」
「アイアイ!あやめを泣かせる奴はボクが許さないよ!」
言葉が出なかった
みんなの言葉を一言ずつ飲み込んで頭で理解するまで時間がかかる
なんと言ったか?
“居場所”になってくれる?
こんな私の?
「……わ、私…ひっく……ここ、に…いても…いいの…?」
「お前がいたいならいればいい」
そう言ってローが頭をポンと撫でてくれた
温かい手に、言葉に、胸につっかえていた冷たいトゲが溶かされていく
「そうと決まれば今日は宴しないとだな!」
「お酒地下から運ばないといけないッスね」
「ボクもっとあやめの料理食べたいな!」
「ずりぃぞ!ベポ!あやめ!なんか酒のツマミ作ってくれよー!」
「おいおい…またやるなんて一言も……はぁ…好きにしろ…」
一気に賑やかになる船内
そんな様子に泣いていたあやめも笑顔になる
ほんの少しだけ、自分のこの力を好きになれた
そんな気がする