第4章 欲しいモノ
ドクン ドクン
今までにないぐらいあやめの心臓が跳ね上がる
手先の血の気が引いて冷たくなっていくが、自分で決めた事を曲げたくない一心で乾いた喉から言葉を出す
「……使ったの。私にある、不思議な力で…ローの毒を癒したのよ…」
チラリとみんなの顔色を見ると驚いた顔をしている
ローは眉間にシワが寄ったままだ
「私の力は、どんな病も治せるの…。癒しの力…それが、私が持ってる不思議な力の正体……。ごめんなさい、隠し…」
「すげー!あやめ!そんな事出来るんだな!」
「…え…」
「キャプテンの能力と相性いいね、すごいやあやめ!」
自分は力を隠していたのにも関わらず、シャチとベポは凄いと言い、あやめを責めるようなセリフは一切無かった
「…治した事実には違いねぇんだ、そんな気に病むな。だが、なぜその力を使った?元々あまり言いたくない様子だったじゃねぇか。」
「確かに、あやめ自分の力の話する時辛そうだったもんな」
見抜かれていた…
屋敷の頃からあまり感情を顔に出すことは無かったのにいつの間にかここの居心地に気を許していたらしい
「……また同じ事になるんじゃないかって思って、大切だったものが歪んでいくあの感覚が怖くて…。もう、何処にも私の居場所なんて無いって、思ってるから」
そこから、改めてあやめのこれまでの話をした
元は普通の平民だったこと
貴族へくらいが上がると父親の金儲けの道具としてこの力を使ったこと
父親に犯されそうになり、母親は愛人のとこに行ったこと
足枷の理由も話した
屋敷には味方が誰もいなかったこと
いつも一人部屋に監禁されていたこと
あの日、海軍に連れて行かれたこと
あの時初めて、自分の力が他者にまで知られており利用価値がある故に海を越えた組織に狙われたのだと悟ったのだと
全てを話し終えたあやめは顔を伏せた
「辛かったよねあやめ…、ずっと一人で抱えていたんだね」
ぐすんとベポが鼻を啜る
「とんだ野郎だぜ!こんな可愛いあやめに酷い事しやがって」
「あやめも苦労してたんだな…」
「お前は、自分の国に帰りたいのか」
「…帰ったって…私には居場所なんてない…っ!」
口にした途端、堪えていた涙がぽたぽたと落ちる