第3章 心境変化
「……俺はアイツに何遠慮してんだ…」
チッと舌打ちするも、先程の問いかけに彼女の顔に陰が差したのを見逃さなかった
本人は平静さを装っていたけど
それにこれ以上は話さない、とも言えるようにこの場から離れたのもローには分かっている
普段の彼なら、自分が知りたいことなど躊躇無しに問うだろう
しかし、どうもあやめには聞けないでいる
「……アイツの事、知りてぇ…」
小さな彼の呟きは波の音に消える程だった
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デッキにたどり着き改めて海を見るあやめは感嘆の声を漏らした
「わぁ…っ、綺麗…」
屋敷にいた頃、海というのは本の中で登場する場所に過ぎなかった
そしていざ海へと思ったら海軍の罠にまんまとハマり船に乗るも嵐によって荒れ狂う海へ投げ飛ばされた
そんな怖い経験をしても、この目の前の景色を見たら怖かった事なんで忘れられる、そのぐらいあやめは目を輝かせた
「あれ?あやめじゃないっスか、何してるんスか?」
「海をね、見たくなって。ペンギンのそれは何をしているの?」
「あやめ釣り知らないんスか?」
そのままペンギンから釣りの仕方を教えてもらったが、餌の虫に悲鳴をあげたり、釣り糸が絡まったりと色々ハプニングがありようやく糸を海へ入れられのは30分も過ぎた頃だった
「………中々釣れないのね」
「なぁに言ってるんスか、こうして釣れない時間も含めて釣りなんスよー。あやめは苦手ッスか?」
「初めてだからまだどうしていいのかわからない感じかしら。でもペンギンとお喋りしながらは楽しくて好きだわ」
「ぐふぅっ!!」
「きゃあ!?ぺ、ペンギン!?大丈夫?」
見ると鼻血を出している、そして何やらうわ言まで言っている
「…も、…もう一回、言って欲しい…ッス…」
どうやら、あやめが何気なく言った“好き”のワードが原因らしい
すると、あやめの釣竿がツンツンと動いた
「あっ!ペンギン起きて!釣竿が動いてるの!」
「…っは!あやめゆっくり引くっス!」
釣竿を握るも強い力で暴れる魚になんとか離すまいと頑張るが、これじゃそもそも引くことすら出来ない