第9章 この先の未来に
緋色は迷った。もちろん、好きな人に結婚を申し込まれて、嬉しい気持ちはある。しかし、自分は怪我をしている。日常生活は送れると言っていたが、それまでどれだけのリハビリをしたらいいのかもわからない。今後毒のせいで、何か後遺症が出るかもしれない。それでは彼の重荷になってしまう。
「緋色。」
優しい声に、緋色は杏寿郎を見上げた。
「君を重荷だとは思わない。むしろ君の荷物を持たせて欲しい。君のこれからの人生、隣りを歩かせてはもらえないだろうか。」
緋色は、泣いた。今度は嬉し涙だ。ここまで言われて断る理由はない。緋色は、指輪を受け取った。杏寿郎は嬉しそうに笑う。
「結婚を申し込む、というのは思ったよりも緊張するものだな。」
杏寿郎は、ふー、っと息を大きく吐いた。
「共に生きていこう、緋色。」
返事の出来ない緋色は、大きく頷いた。