第5章 緋色の秘密
突然の緋色の涙に杏寿郎は慌てる。
「すまない、何か気に触ることを言ったか?」
そうではないと、緋色は首を振る。
杏寿郎は人の少ない河原のベンチに緋色を連れて来ると、二人で座った。
「私には姉がいました。」
緋色が淡々と話し出す。
「二人共親の顔も知りません。物心ついた時には孤児として寺で暮らしていました。」
緋色が言い淀む。深呼吸をしてから、また口を開いた。
「姉は私とは違い、小柄で可愛らしい人でした。話すのが苦手な私の分まで笑い、泣き、怒ってくれる人でした。」
姉の名は瑠璃と言った。うまく話せない緋色の変わりに、たくさんの話しをしてくれた。
「ある日お使いを頼まれた姉は出掛けて行きました。
、、、そして二度と帰って来ることはありませんでした。」
はじめ、瑠璃は事故で亡くなったと聞いた。しかし亡くなってからしばらくしてから、姉は事故で亡くなったのではないと知った。
「近くの村で若い女性が行方不明になる事件がありました。その時に聞いてしまったんです。」
『瑠璃ちゃんみたいに鬼に食べられたんじゃないか。』
「私は頭の中が真っ白になりました。姉は、私の大事な姉は、殺されたのだと、知りました。私は、私の感情をうまく制御出来なくなりました。」