第4章 逢引、またの名をデート
甘味を食べ終えた二人は外に出た。
「君に贈り物をさせてくれないか?」
杏寿郎が、緋色を振り返る。緋色の目が困っている。
「その着物に合う簪を贈らせて欲しい。」
この着物だって杏寿郎からの贈り物だし、甘味処も結局お金を出してもらっている。緋色はますます困ってしまう。
「俺の選んだ簪をつけて欲しい。ダメだろうか?」
「、、、どうして、、、」
緋色の小さな声が聞こえた。
「、、、どうして私なんかに、たくさんの贈り物をくださるのですか?」
杏寿郎は人前ではあるが、そっと緋色を抱き寄せた。
「好きだからに、決まっているだろう。少しでも君が喜んでくれれば、俺も嬉しい。それに、、、」
杏寿郎は体を離すと、緋色の目を見た。
「最近君は表情が豊かになった。贈り物の一つや二つで君の表情が変わるのであれば、俺はそれを見たいと思う。」
緋色は驚いた。表情が豊かになった、など、一生言われることのない言葉だと思っていた。
あぁ、違う。昔、そう言ってくれた人がいた。
『緋色は表情豊かね。もっともっとそれに気づいてくれる人が出来るといいわね。』
緋色の目から涙が一粒落ちた。