第9章 牽制
杏「もしもし。女性の部屋に押し入って暴力を働いた男がいるので引き取りに来て頂きたい。」
杏寿郎はすぐに警察に通報をすると再びりんの有り様を見て辛そうに顔を歪めた。
杏「すまない。この男が部屋に入る様子を見ていた。あの時すぐに声を掛けていれば…、」
そう言いながら優しく頬に触れる。
杏「本当にすまなかった。」
りんはその優しい体温を感じると泣いてしまいそうになったが、男がいた為に顔を顰めてこらえた。
杏寿郎はそんなりんの心中を察するとあえて言葉をかけず、代わりにまだ呻いている男へ視線を落とした。
男は苦しそうだった。
杏寿郎が絶妙な力加減で喉を抑えていたからだ。