第8章 しょーくんの願い事
「ねぇ、だーりん。だーりんは、さとしくんのコト覚えてるにゃ?」
「…さとしくん?…って、もしかして、赤ちゃんの時に亡くなった兄さんのコト?」
「そうにゃ!」
「…覚えてるもなにも、俺が産まれる前に死んじゃったからな
写真くらいなら見た事はあるけど、何しろ赤ちゃんだったし」
「…そうなのにゃ」
…なんか、可哀想なのにゃ
だって
さとしくん、あんなにお家に帰りたがってるのに
だーりんはさとしくんのコト知らないのにゃ
…きっと、しょーくんも、まーくんも、かずくんも、知らないのにゃ…
そんなんで、お家に帰ってきて…
さとしくん、余計に寂しくないのかにゃ?
「……可哀想、にゃ///」
「…死んだ兄さんのこと?」
「そうにゃ」
「…そうだなぁ…産まれて一年足らずで死んじゃうなんて…可哀想だね」
「……」
さとにゃんは、そうじゃないんだって言おうと思って、やめた
だって、そんな事を言ったら
ぼくとさとしくんの事を話さなくちゃいけなくなっちゃう
…そんなこと、さとにゃんには言えなかった
…言いたく、なかった
ぼくがぼくで無くなってしまうかも知れないって事を言いたくないって言うのも
もちろんあったけど
さとしくんが、ぼくのカラダを乗っ取ろうとしている恐い子なんだって事を
言いたくなかった
ぼくは、可哀想なさとしくんの事を
悪い子だって、思われたくなかった
「…そろそろ家に帰ろうか?」
「……うん」
お家に、帰ろう
さとしくん
ぼく、お家に帰るよ
さとしくんにとって、どうしても帰りたいあのお家は
ぼくにとっても、何時も帰りたいお家なの
だからね、可哀想なさとしくん
ぼくも、お家に帰りたいのにゃ
あのお家で
しょーくんと
まーくんと
かずくんと
だーりんと
五人で仲良く暮らして行きたいのにゃ
「だーりん、だっこにゃ!!」
「…え?抱っこ?」
「うん!だっこして帰るのにゃ〜♪」
「…しょうがないな」
…て言うか
「だーりんは、誰にも渡さないのにゃ(にやり)」
「…さとし、顔が怖いぞ(笑)」
…結局、そこかい 。