第2章 彼女が酔ったら 不死川実弥の場合
「たまには外で飯でも食うか。」
そう言った不死川に連れられて、安は食堂に来ていた。最近人気の食堂だということで、夕餉には早い時間だったが、空いてる席はまばらだった。
安はご機嫌だった。彼は中々忙しい人だから、こうやって出かけることもあまりない。正直、寂しい時もあるが、安はそれを言ったことはなかった。
「美味しかったですね。」
「あぁ、そうだな。」
食事を終え、最後に飲み物を飲んで帰ろうと、安はジュースを、不死川は酒を頼む。
「お待たせしました。」
二人の前に飲み物が置かれた。
「かんぱーい」
安が可愛い笑顔でグラスを掲げる。不死川は自身のグラスを軽く持ち上げた。
「美味しいっ。」
一口飲んだ安が言う。安はどんどんジュースを飲んでいく。
不死川が異変に気づいたのは、安がほとんどジュースを飲んだ後だった。目はとろんと潤んでいて、顔も赤い。
「おい、大丈夫か?」
「、、、ふふっ、ふふふふっ、、、あぁ、楽しい。」
安が突然笑い出した。不死川が安の飲んでたグラスの匂いを嗅ぐ。
(酒じゃねぇか)
不死川は叩きつけるように代金を置くと、安を連れて外に出た。
「さねみさぁん、どうしたの?楽しいよ?」
安はケラケラと笑っている。どうやら笑い上戸のようだ。しかし足元がおぼつかない。不死川は安を抱き上げると、家へと急いだ。