第1章 彼女が酔ったら 宇髄天元の場合
「、、、てんげんさまぁ、、、」
ひなたが隣りの宇髄に寄りかかる。いつもと違う甘い声に、宇髄は顔を覗き込む。ひなたの頬は赤く染まり、目は潤んでいた。
ことの始まりは一時間ほど前。今夜は二人共任務もなく、月が綺麗だからと月見酒をすることにした。月見酒と言ってもひなたはお茶だが。
「「かんぱーい」」
猪口とグラスを掲げて乾杯をする。二人の間には盆が置かれていた。酒や肴が置いてある。
「たまにはこういうのも悪くないな。」
宇髄が月を見上げる。見事な満月だ。
「本当ですね。たまにはこう、のんびりするのもいいですね。」
「ひなたもいるしな。」
宇髄の言葉にひなたの顔が赤くなる。この年下の彼女はいつまで経っても宇髄のそんな言葉に頬を染める。
「、、でも、これが邪魔だな。」
言うと宇髄は盆を持ち上げた。自分の反対側に起き、ひなたの腰に手を回すと、ぐっ、と自分の方に引き寄せた。
「、、天元様っ、、」
「これでひなたの顔が良く見える。」
宇髄はひなたのおでこにキスを一つ落とした。