第20章 伝えてみたら・煉獄杏寿郎
「炎の呼吸、壱の型、不知火っ」
鬼の首が落ち、灰のように崩れていく。杏寿郎は大きく息を吐いた。血気術も使えないような下級の鬼だった。見回りもそろそろ終わる。
(帰ったら少しはゆっくり休めるだろうか。)
ここのところ任務で忙しく、まともな休みもない。今日は任務はなく、見回りだけだった。
(これでがいれば完璧なのだが。)
杏寿郎は愛しい恋人の顔を思い浮かべた。杏寿郎の恋人のは昨日から任務に出ていた。恋仲になってから、少しでも長い時間一緒に居たくて同棲を始めた。しかし、柱は忙しい。彼女も彼女で任務に追われている。二人がゆっくり過ごせる時間は限られていた。
杏寿郎は自分の屋敷に帰った。ふと玄関に見覚えのある靴があるのに気がついた。
(が帰って来ている。)
杏寿郎は破顔した。自分が見回りに出た後で帰って来たのだろう。杏寿郎は急いで湯浴みをすると、自室へと向かった。