第14章 抱きしめて・悲鳴嶼行冥
「失礼します。師範、就寝の挨拶に伺いました。」
は静かに襖を開ける。
「あぁ。ゆっくり休むように。」
部屋の中に、寝衣を着た悲鳴嶼が立っていた。
「おやすみなさいませ。また明日もよろしくお願いします。」
が頭を下げる。
「、おやすみ。」
はこの瞬間が好きだ。名前を呼ばれて、おやすみを言われると、とても幸せな気分になる。
は開けた時と同様、静かに襖を閉めた。
もう師範を好きになってどのくらい経つのか。15で継子になり、もう3年程になる。自分も18になった。同じ年頃の女の子は嫁ぎだす年齢だろう。鬼に家族を殺され、鬼殺隊に入り、日々鍛錬、日々任務に明け暮れてきた。そんなの心の拠り所は師範である悲鳴嶼行冥であった。気づけば師範が好きで、でも師範と継子という関係上、踏み出すわけにもいかなかった。それもそろそろ限界だった。