第3章 君が欲しくて
あんな事した俺にそんな事を言ってくれるなんて、いい子だな。
やっぱり、諦めたくない。
「ねぇ、ちゃん、一日だけでいいから、俺とデートしてくれない?」
驚いた顔がまたこちらを見る。
「ちゃんがよかったら、だけど……手、繋いで、楽しい事いっぱいしてさ」
俺の提案に少し考えていたちゃんが、少ししてゆっくりと頷いた。
嬉しくなっはしゃいでしまって、抱きつこうとしたら叩かれてしまった。
その痛みすら嬉しくてニヤケていたら、君は呆れた顔で笑ったんだ。
初めてみる表情に、心臓が高鳴って、また君を好きになった。
とりあえずずっと外にいるわけにはいかないから、俺は少し動ける様になってきた体を動かして立ち上がった。
「行きたい場所があったら、連絡して」
そう言って連絡先を書いた紙を渡すと、不思議そうにこちらを見上げる。
「何?」
「ホストさんて名刺渡してるイメージが……」
「ああ、でもちゃんはお客さんじゃないし、好きな子に仕事の名刺渡すのは違うっしょ? ちゃんには少しだけでも誠実でいたいからさ」
行動は誠実とはかけ離れてるけど。
ちゃんの手にゆっくり触れると、少しビクリとしたけど振り払われる事はなかったから、そのまま握って口元に持っていく。
「ホストの俺がいいなら……危ないのでお送りしますよ、プリンセス」
「いや、普通でいいです」
「あはは、やっぱちゃんはいいなぁー」
自然な自分でいていいんだと、そう思わせてくれる。でも、本当の俺を見たらきっと君は俺から離れていく。
そのくらい、俺はきっと壊れてるんだと思う。
嫌がられない事をいい事に、俺はちゃんの手を握ったまま歩き出した。
「手当、しなくていいんですか? 消毒くらいなら、うちありますけど……」
天然なのか無防備なのか。彼女は警戒心を剥き出すわりに、たまに危機感というものにかける時がある。
「心配してくれるのは飛び上がりたくなるくらい嬉しいし、ありがたいけど、ちゃんはもう少し危機感持った方がいいね」
「どういう意味ですか?」
眉間に皺を寄せて聞き返すちゃんが、俺を少し睨む。