第3章 君が欲しくて
その表情ですら可愛いと思ってしまう。
「君の目の前にいるのは、君より力のある男で、君に好意を持ってる。そんな奴を家に入れようとしてるんだよ、分かってる?」
「わ、わかってますよ、でも伊弉冉さん、だし」
「俺だから何もしないって?」
「す、するん、ですか?」
「そりゃーするよー、好きな子と部屋に二人きりになれば、俺も一応男の子だしねー。つかー、さっき何されたか、もう忘れちった?」
「うっ……」
痛い所を突かれたみたいな顔をしたちゃんが、やっぱり可愛くて笑う。
多分彼女は、ただ俺の傷の心配をして言ってくれたんだと分かっている。
でも、俺は君と二人で部屋なんかにいたら、絶対手を出してしまうから。
だって、好きな子に触らずにいられるほど、綺麗じゃないから。
「分かったっしょ? 大人しく送られてなって」
まだ少し納得いかないようだったけど、大人しく頷いた。
ちゃんの家に着いて、名残惜しく手が離れる。
「ちょっと、待ってて下さい」
走ってマンションに入って行き、しばらく待っていると、小さな体を揺らして走り寄って来る。
俺の手首を掴み、マンションの横に設置してあるベンチみたいなモニュメントに座らされる。
「こっち向いて。痛くても、じっとしてて下さいね」
持ってきた救急箱らしき物を使って、手際よく手当てしていく。
本当にどこまでも律儀というか。
「ふふ……っ、てっ!」
「何笑ってるんですか……ほら、じっとして」
出来るだけ痛くないように優しくしてくれてるのが、凄く伝わって来て、胸が温かくなる。
じっと彼女の顔を見つめる。
前は、こんなに近くで女の子を見つめるなんて無理だったはずの俺は、一体何処へ行ったんだ。
真剣に手当てをするちゃんを見つめていると、ウズウズしてくる。
凄く、触りたいな。駄目だよな。つか、俺こんなに忍耐力なかったのか。
「あ、の……」
「ん?」
妙に赤い顔をしたちゃんが、恥ずかしそうに目をキョロキョロ動かしながら、言いにくそうに口を開く。
「あ、あんまり、ジっと見ないで……」
小さな声でボソボソ言って、顔を逸らしたちゃんの顔は明らかに嫌がってるそれじゃなかった。