第3章 君が欲しくて
心配そうに近寄って来てしゃがみ込み、顔を覗き込む。
カバンから急いで取り出したハンカチで、汚れる事すら厭わずに、頭の血を拭いてくれる。
物凄く近くにちゃんの顔があって、自然と手が彼女の手首に、もう片方は首に回して引き寄せる。
「いざっ……んっ……」
「っ……」
口の中が痛くても、やめられない。
こんな事を自分からするなんて、信じられないくらい興奮してしまう。
多分彼女からすれば、こんな恐怖はないだろう。
これで、もう会う事もないだろうし、俺の恋もこれで終わりだ。
「はっ、ぅんっ、ふっ、ぁっ……」
「はぁ……ンっ……」
舌を絡める度に、開く唇から漏れる声が堪らなく可愛くて、食らいついてしまう。
ゆっくり唇と手首を離して、彼女の体を出来るだけ優しく突き放す。
「何っ……」
「ごめんね……。ハンカチっ、ありがとう……でも、もう暗いし危ない、からっ……もう帰りな? 俺みたいな悪い男に、狙われちゃうからさっ……」
今更謝っても仕方ないのに、つい言葉が出てしまう。
尻もちをついたまま、困惑の色を浮かべてこちらを見るちゃんから目を逸らし、誤魔化すように無理やり立ち上がる。
「っ! くっ……」
「そんなボロボロの状態でっ、何処、行くんですかっ!?」
「大丈夫大丈夫ーっ。ほら、俺っち男の子だしっ……」
彼女を見ずに歩き始めた俺の背中を、彼女の小さな手が思い切り叩いた。
「いっっ!! ゴホゴホッ!」
衝撃に片膝を付いて咳き込む。
「何言ってんのよこのバカホストっ!」
「ばっ……?」
「ほらっ、大人しく座って」
改めて座らされ、ハンカチで傷を優しく拭ってくれる。
怒った様子のちゃんに、抵抗出来る訳もなく、大人しく言う通りにする。
一通り拭き終わったのか、ちゃんは頭の傷にハンカチを当てたまま、それを俺の手に握らせて隣に座った。
「スカート、汚れちゃうよ?」
「今更ですよ」
「そうですね……すみません」
軽くにしろ、突き飛ばしたのは事実だから、謝るしか出来ない俺の横に、あまり離れない程度の場所に座るちゃんが口を開く。
「何でき、キス、なんか……」
立てている膝に額をつけて呟く。