【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第9章 1話 理不尽なこの世界
この世界には男女、と言う性別とは別に第二の性が存在している。
優れたるα、可もなく不可もないβ。そして劣るΩ。
この第二の性は社会的地位を示すモノであり、αであれば約束された地位。βであれば普通の地位。Ωであれば生き辛い地位が約束される。
殆どの性はβであり、αもΩも限られたごく少数しかいない。
両親もβであり、自分にずば抜けた才能がある事も無かった。だからβなのだろうと思って生きてきた。
可もなく不可もなく生きていく。
――――筈だったのに。
「影山飛雄君。第二性の診断結果が出たの。落ち着いて聞いてね。君の性は…………」
告げられた事実に視界が暗く、足が重くなった事を俺は永遠に忘れる事がないのだろう……。
劣等Ω
1話 理不尽なこの世界
薄いのに強い。強いのにある事を忘れてしまう程に無色透明で澄んでいる。ドームから見える青空はドームの中に入る前から何一つ変わらない色をしていて、よく存在を忘れてしまう。
未発達の子供達と番を持たないΩを護る為に作られた安全な世界。在って当たり前の世界に不満はない。
あるとするならばそれは……。
『影山飛雄君。第二性の診断結果から君はΩだったの。昔と違って今の社会ならばΩであったとしても悲観する必要はないの。でもこれから、色々とΩとして生活していく為に必要な事を話さなきゃいけないから。ご両親と一緒にお話ししていくね』
今から四年前の第二性診断の結果を医師に言われた時の事は、昨日の様に思い出せる。
言われた瞬間に目の前が真っ暗になり、底なし沼にでも落ちた錯覚を感じた。その後の長い説明は頭に入らなく、ただ分かった事は俺はこれから一生Ωとして生きていく事。
安心して生きて行く為には番を探す必要がある事。そして孕まされる立場として生きていく……事だった。
Ωとして当たり前であるその運命が俺には耐えられない屈辱だった。
両親共にβであり、秀でた才能を持たなかったので同じβで親の様に生活していくと思っていた。それが叶わないと分かった今、俺は番を持たないΩとして生きていく事だけを考え続けて今に至る。
「…………」
雲一つない青空を見つめながら、溜息すら出なかった。そんな俺の意識を引き戻す声がした。
「影山。何してるの?早くして欲しいんだけど」
「……は?」