【夢小説】オタク+オタク=? 番外編【影山飛雄/R18】
第10章 ◎すれ違い
「なんで……」
「……は?」
「なんで『私が』堅治の所に行かないといけないの !? 『堅治は』私の所に来てくれた !? 全然来ないじゃないの!何で私が行くのが当たり前だと思ってるの!」
マズイ。言葉に出してしまったのと同時に、心に溜まってしまっていた黒いモノが溢れ出てしまったのを感じた。
でも一度出てしまったらもう止まらない。
我慢していたモノが次から次へと言葉になってしまう。
「ずっと部活部活で私の事なんて放置してた癖に!何回約束部活理由で無くなったと思ってるの !? 埋め合わせする、も口ばっかりで!会いに行っても部活の話しかしないで、私の事なんてどうでもいいんでしょ !? 」
「沙耶っ!俺はっ!」
涙が出てきた。もう私に構わないでよ。どうせまたすぐに後回しにする癖に。
私の優先順位なんて最下位なのに。
「そんなに部活だけを優先したいならば、彼女なんか作るな!今まで散々人の事蔑ろにした癖に、自分が相手してもらえなくなったら急に来て!私は堅治の都合のいい女じゃない!」
私の言葉に堅治の手の力が緩んだのを、見逃さなかった。
すぐに手を思いっ切り振り払い、バス停にバスが止まっているのを見て行先も見ずに乗り込んでしまう。
私が乗り込むのと同時にドアは閉まってしまい、反応が遅れた堅治はバスに間に合わず、発車をした。
心に溜まっていた黒いモノが爆発的してしまった。
堅治に対して酷い事を言ってしまった自覚もある。
でももう……私の心が耐えられなかった。
こんな終わり方、最悪だ。
後腐れなく別れたかったのに、何で堅治は私の前に姿を見せたのだろうか。
自分にも、堅治にも、イライラしながら出てきてしまう涙を拭きながら、行き先を確認していないバスに身を揺られていた。
(2021,5,16 飛原櫻)