第36章 漆黒の葬列　前編

どうやら警察も原作通り、通報者の存在もあって殺人未遂を疑っているそうで、私に更なる情報の有無を尋ねる彼らと離れた場所でコナンも私達の会話に耳を傾けている。



椎奈「あー……だけど目暮警部、そうは言っても曖昧なものですよ？音は本当に僅かなもので、ガチャンッで金属が鳴る音がしたんです。後は動画にしては不自然なタイミングの、フラッシュとかかしら……。直後にシャンデリアが落下したから、無関係とは言いづらいので……」

目暮「ウーム……」

伊達・松田「「フラッシュってのが、なぁ……」」

樽見「事故ですよ事故！シャンデリアの鎖が古くなって切れて、偶然その政治家が下にいたってわけですよ……。死人が出たこの悍ましい会場に、僕達を留める理由は無いと思いますけど？」



私の話を聞いても無意味に思う事なく、航くんや陣平くんだけじゃなくて目暮警部も（この人は本気で）悩んでくれる。視界の端では新一も顎に指をかけて思案中であった。しかし音楽プロデューサーの樽見直哉さんが事故じゃないかと言い始め、事件が事故かで議論になっていく。



桝山「じゃが、殺人を示唆する通報があったんじゃろ？あれはどう説明するんだね？我々を詮索する前に、まずは通報者の事を詳しく教えてほしいもんじゃ……。もしかしたらその通報者が犯人かもしれんからのぉ……」

目暮「ああ、それはご心配なく。現在、その者を特定しておりますので……」

新一「？！！」



離れた場所で聴取に聞き耳を立ていたコナンが、警部のその発言を聞いて想定外の事だったのかギョッと目を剥いていた。



麦倉「じゃあきっとイタズラですよ……。ほら呑口議員、例の疑惑で世間的に反感を買っておられましたし……」

三瓶「そうそう、そのイタズラに偶々この事故が重なっただけの事……天罰ですよ！悪いことは出来ませんなぁ……」

樽見「死体の前でよく食べられますね……」

三瓶「フン！肝の小せぇ若造は黙ってろ！」



樽見さんや麦倉さんに同意して発言する三瓶さんだが、彼はこの様な深刻な状況でも喋りながら食事を止めないでいる。周囲がそんな不謹慎な態度に唖然となっている中、樽見さんが注意しても悪態を吐く物言いはかなり酷いものだ。しかし文句を言った直後、顔色を変えて口から何かを汚くもぺッと吐き捨てたのだ。