第29章 災難は凡ゆる形で襲い来る

それから更に数日後、コナンは怪盗キッドと会敵する事となった。しかもこの事件はニュース沙汰となってテレビに流されていて、見事にキッドを追い詰めたコナンに付けられた異名は『キッドキラー』だ。「隠密って言葉を調べなさい」、無駄だと分かっていてもそう注意したのは言うまでもない


月下の奇術師・怪盗キッド……、彼は世間で有名なこの通り名で語られるけども、本当は『怪盗１４１２号』という名称だった。ところが私と新一の父親・優作が昔に彼の予告状やサインを見た時、１４１２の筆記体を『ＫＩＤ』と読んでしまった事でその名が広まったのだ。それ以来、あちらも訂正は求めず怪盗キッドと名乗っていたけど、ここ数年間は姿を消してしまっていた。それが今年になって再び世間に出て来た、予告状が警察に届いた時は大層騒いだことだろう……


そんな怪盗キッドには大勢の一般人のファンがいて、ほんの少し前まではマジック好きな普通の男子高校生だった。そう、自室の隠し通路の先でキッドの衣装を見るまでは、マジックショーで父親が死んでしまった原因を知るまでは。先代は有名なマジシャンだった黒羽盗一さん、今は息子さんの黒羽海斗くんが、世間は彼らが別人なのだと気づいていない……。ただまぁ、彼の幼馴染で警部の娘・中森青子ちゃんや、クラスメイトの魔女っ子ちゃんな小泉紅子ちゃん、警視総監の息子さんで探偵の白馬探くんは察しがよかったけども……


何せ盗一さんの変声術と変装メイクの技術は脅威だ。彼からベルモットが教えてもらって犯罪に使われ、母さんが変装で新一や哀ちゃんや服部くん、赤井さんに使用して救いの一手にもなる。良くも悪くも素晴らしい技術だ、便利なものほど使い道次第で恐ろしくなる


勿論、この件についても零くん達には報告しておき、盗一さんの生存説についても告げている。後は彼らが正体を証明できる証拠を掴めるかどうか、そして怪盗キッド親子の行く末がどうなるのかは必要ならば教えられる


パンドラは数あるビッグジュエリーの中の一つにあり、これを持つ者が人類最後の願いである不老不死の力を持つことができると言われている。見つける唯一の方法は、ビッグジュエリーを月光に当てること。月の光を浴びるとビッグジュエリーの中に赤く光るパンドラが現れ涙を流し、その涙を飲んだ者は不老不死の力を手に入れると言われているけど……