第6章 妻のヤキモチ
side.名前
私と悟さんは近所のカフェにやってきた。
店内に入るなり、悟さんは店員さんや女性客の皆さんのの目を奪い続けている。
どうしよう…
視線が痛い。
「はい。名前。あーん♥」
ケーキを口元に運ばれて、大きく口を開けた。
「あーん」
「どう?美味しい?」
もぐもぐと咀嚼して、ゴクリと飲み込む。
「…うん…美味しい…」
「そっか」
すごく嬉しそうに私を見つめる悟さん。
一人で食べられるのにな…
悟さんは、何度もフォークを往復させた。
「はい。もう一口。あーん♥」
「あーん」
もう一口、パクリと食べる。
「ねえ。あの人すごくカッコイイ♥」
「ほんとだー」
嫌。
聞きたくない。
悟さんは私の旦那さんなのに。
他の魅力的な女性がいたら、
心が揺らいじゃうかも。
そうしたらまた一人…
「名前?どうしたの?」
「…えっ?…ううん。何でもない…」
笑ってみせると、悟さんは私の頬に手を当てた。
その仕草にドキッとする。
「悲しそうだよ?」
「っ…本当に…大丈夫」
「そう?」
悟さんは私の後頭部に手を回し、
額にチュッとキスをした。
「えっ?」
「元気になるおまじない♥」
呆然とする私に、へらりと笑う悟さん。
「これで静かに食べれるかな?」
私の顔がボッと顔を赤くなると同時に、
店内が一瞬にして静まる。
その直後、鼓膜が破れそうな程の黄色い悲鳴が飛び交って、
私達はお店を出ざる追えなくなった。