第32章 初めての恐怖*
side.名前
お父様の病室の前に近づくと、
黒いモヤの様なものが視えた。
やっぱり怖い…。
「名前。私がいるから大丈夫だよ」
「…冥さん…」
ビクついていると、
冥さんが私の頭を撫でる。
「…はい…」
大きく深呼吸をして、病室に入った。
中へ入ると黒いモヤが一層濃くなる。
お父様の容態も、前回来た時より悪そうにみえた。
「名前。落ち着いてるね?」
「はい」
「私が帳を下ろすから、その後で呪いを祓うよ?」
「はい」
流石、私のお姉様。
段取りも、教え方も上手くて、
悟さんとは違う頼もしさを感じる。
「じゃあ呪いを祓おうか」
「はい」
私は父の身体に手を当てる。
まず火気の力を心臓へ流したい。
「木気は火気を生ずる」
病室の生けてある花が燃えると、火の力が生まれた。
心臓に 気を送る。
すると火の力を含んだ血液が、父の身体を巡った。
動脈を流れ、静脈から肺へ。
行き場を失った呪霊が口からでてくる。