第31章 可愛い妻の誘拐
side.名前
どうしてこうなったんだろう…。
蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちなのかもしれない。
「名前はどうしてここにいるのかな?」
「えっ?…あっ…えっと…」
笑顔なのに、声のトーンが
恐ろしいほど低い悟さん。
怖い…。
「私が連れてきたんだ。何か問題かな?五条くん」
言い淀んでいると、
冥さんに肩をグイっと引き寄せられた。
「大問題だよ。だって彼女は僕の可愛い妻なんだから」
「フフッ。聞けば彼女は籠の中の鳥らしいじゃないか」
「それ。冥さんに関係ある?」
「いいや。ただ鳥の種類によっては…外に出してあげないと、死ぬ鳥もいるんだよ?」
「それは僕が決めることだよ」
「生かすも殺すもかい?」
悟さんと冥さんは、
一見穏やかに話し合っているように見える。
でも、間に挟まれている私は
凍てつく空気を感じ取っていた。
この状況をどう打破しよう…
ハラハラとした気持ちで2人を見る。
そもそもの事の発端は、
数時間前に遡る…