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【鬼滅の刃】水鏡之人【錆兎】

第3章 さしも知らじな





「……錆兎、何度言えばわかる。俺には継ぐ資格がない。俺が選別を通過出来たのは…、」

義勇は流れるような足取りで、錆兎の一撃をかわし死角に入ると、その横っ腹目掛けて竹刀を振るう。

「自分の力じゃないっ!」

錆兎がその一撃を受け止めた。

「くっ!」

そのまま義勇の竹刀を弾くと、その反動で後ろに飛び、距離を取って着地する。

「選別選別って…、いつまでもそんな昔のことっ!!いい加減にっ…、」

錆兎は一呼吸も置かず、着地した足を強く踏み込むと、義勇目掛けて飛び出した。

「男なら、腹をくくれっ!……水の呼吸・漆ノ型……」

 雫波紋突き・改

静かな湖面に、突然の強雨が降り注ぐように、無数の波紋を描き、錆兎の鋭い刃先が高速で繰り出される。


義勇はヒュゥゥっと呼吸整え、刀を静かに降ろした。

 水の呼吸・拾壱ノ型…

「凪」

錆兎の高速で動く無数の突きを、同じく高速で動く、義勇の竹刀が弾き飛ばしていく。

恐らく素人には、捕らえる事は出来ない。ただその場に巻き上がる砂煙だけが、その凄まじさを物語っていた。





そして長い攻防の末、錆兎の突きを弾いた義勇の最後の一撃が、錆兎の首を捉えていた。

当たっていないはずの剣先の、その風圧だけで、錆兎の首に薄っすらと血が滲む。

「……義勇、お前…強くなったな。やっぱり俺の後を継げるのはお前しかいない。」

「それは違う、錆兎。俺が強くなったんじゃない。お前に雑念があるからだ。」

そう言われ、錆兎は驚いた顔で義勇を見返した。

「…そうか、…そうだな。」

人の気持ちに鈍感な義勇にさえ、長年打ち合ってきた太刀筋に迷いがあることは誤魔化せなかったようだ。

痛いところを突かれ、錆兎は軽く笑うと、その場に力なく座り込んだ。






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