第3章 さしも知らじな
音羽との、秘蜜の情交から数日。錆兎は、鬼殺隊を統括するお館様こと産屋敷耀哉のいる屋敷に訪れていた。
今日は半年に一度、柱達が集う柱合会議の日だった。錆兎も当然、水柱としてその会議に参加していた。
柱合会議も終了し、錆兎は産屋敷家の門を抜けると、軽く一息ついた。
(はぁ、今日は平和だったな。)
今日の会議は珍しく、問題ごともなく順調に事が進んだ。
たぶん、会議とくれば、とりあえず問題を起こさないと気が済まない、風柱の不死川実弥が今日は大人しかったおかげだろうと、錆兎は心の中で勝手に推測していた。
だがなんにせよ、柱合会議という重要な任を終えて、肩の荷が一つの降りたのは間違いない。
しかし、本来なら安堵し喜ぶべきなのだろうが、錆兎の心は今ひとつ晴れなかった。その原因は、勿論音羽だ。最近、音羽と事に及んだ後は、いつも決まって同じような気分になる。
(たくっ…、何で俺があんな奴のことで、いつまでもイライラさせられなくちゃいけないんだ。音羽が、俺にあんな態度なのは今に始まったことじゃないだろ?)
(……だいたい、アイツがどんな男と関係持ってたって、俺には何の関係もないじゃないか。)
(もういっその事、あんな女とのことはバッサリと終わらせるか?その方が反対に…すっきりとして……、)
そこで錆兎は、何かを考えるように俯いた。
(だが……、)
そう思う、思うのに、頭に浮かんでくるのは、自分に対して顰めっ面と罵声しか浴びせてこない、小憎らしい女の姿ばかり。
錆兎はゆっくりと上げた、自分の掌を見つめた。
この手が音羽の暖かい温もり、柔らかな感触を覚えてる。この手の小さな動き一つで、ただそれだけの事で、音羽は驚くくらいに息を乱し、艶めかしく身体を震わす。