第12章 二人だけの…
次の休日
音羽は錆兎と待ち合わせの約束をした繁華街の一角、そこから少し離れた民家の影で、待ち合わせ場所の様子を伺っていた。
今日は錆兎と約束で交わした、初めてのデェトの日。
ちょっと早めにと思ったのだが、もうすでに待ち合わせ場所には錆兎がいて、遠くからその姿を見た瞬間、足がパッと止まってしまった。
なぜなら…、
(え!?うそ……、カッコいい!!)
錆兎が普段の隊服姿とは全く違う装いで、その待ち合わせ場所に立っていたからだ。
そこに佇んでいた錆兎は、長い宍色の髪を後ろで一つに束ねて結い、詰め襟のシャツの上に長着、袴を着用した学生風の装いをしていた。
その服装が錆兎の精悍な顔立ち、真面目な雰囲気に良く似合っていて、音羽はドキドキと自分の心臓が高鳴っていくのを感じた。そして思わず近づくのを躊躇ってしまったのだ。
(ど、どうしよう。あんな姿を眼の前で直視出来るかわかんない。)
焦り戸惑い、ウロチョロとその場を何度も行ったり来たりしてみる。
するとすぐ背後から声が掛けられた。
「お前、こんなとこで何をウロチョロとしてんだ?」
「ひゃあぁっ!さ、錆兎っ!な、なんでここに……、」
「なんでって……、不審にうろついてるし、第一俺が誰かの視線に気づかない訳がないだろ?」
そうだった、相手は柱。もっと完全に気配を消すべきだった。
あーまずい、もう逃げられないほどに完全に見つかってしまった。まだ心の準備が整っていなかったいうのに……、
どう観ても不審に視線を泳がせる音羽の姿に錆兎は訝しげに眉を顰める。が、すぐに全身に視線を向けるとほっこりと顔を緩ませた。
「やばい、想像以上にいいな。」
「ふぇっ!?」
音羽は錆兎の視線が自分の全身に向いてるのを感じ、顔が熱くなり頬を抑えた。
「あ、ありがとう。こういう時、何を着たらいいのかわからなくて……、だから蝶屋敷のみんなに助言して貰ったの。」