【原作沿い夢小説】オタク+オタク=?【HQ/影山飛雄】
第10章 8ページ目 心がモヤモヤする時は
自分の気持ちが落ち着いたら、朔夜に対してコート上の王様と言う異名の事を話せるのだろうか。話された朔夜はどんな返事を返してくれるのか。
それを考えると気は重い。でも、今は……。
「バレー部っ試合っ」
影山の気持ちも知らずに楽しそうにしているその姿を見ているだけで気が楽になる。そんな気がしてきた。
「いざ出撃!バレー部!」
「……好きにしろ」
「わぁい!許可貰ったぁ !! 」
キャッキャッと喜ぶ姿を見下ろしていると、自分の思い詰めていた時間が無駄だった気がしてきた。朔夜の馬鹿が移ったのかと影山が考えていると、朔夜は言う。
「じゃあ明日、ね」
「…………ああ」
「楽しみだ、明日」
「……そう、だな」
影山の返事を聞いてへにゃっと笑っていた朔夜だったが、足元に居るてまりが玄関へと向かっていく。
犬に人間の都合など関係ないと言わんばかりの動きだった。
それを見た朔夜はヒラヒラと手を振りながらお休み〜、と言いながら朔夜は自宅へと入っていってしまった。
残された影山はそこまで遠い距離でもないし、ランニングだと思えば気にならないと、自分も自宅へと帰っていくのだった。
◆
「…………」
ベッドに横たわりながら、影山はぼやーっと自分の手を眺めていた。
(小せえ指だったな……)
そんな風に思いながら、朔夜に掴まれいていた感触を思い出す。小さくて、少し暖かく強くも弱くもない掴む力。
「…………熱い」
小さく呟きながら、顔を腕で覆って小さく呟いた。
小指が熱を帯びる感覚も、朔夜の事が頭から離れない理由も影山には分からないままだ。
この、説明しようのない感情が何なのか分かるのはもう少し先の話となる。
嫌じゃない、そんな感情の名は。
(2021,8,20 飛原櫻)