【原作沿い夢小説】オタク+オタク=?【HQ/影山飛雄】
第10章 8ページ目 心がモヤモヤする時は
日向には気にした事所か考えた事も無かったのに、何故か朔夜に対してそんな事を考えてしまっていた。
(俺は……何をしたいんだ…………)
そう思った時だった。
ふと、小指に温かさを感じた。そして、その温かさと共に『掴まれている』感覚が来た。
「…………」
影山の小指の指先を、朔夜の親指と人差し指が掴んでいたのだ。
手を繋いでいるとは言い難い、手繋ぎ。曖昧である二人の関係を表しているかの様であった。
でも不快感はない。影山からすると小さいその手から感じる温もりは、じわりと暖かく伝わってきていた。
掴まれているのを見ても、握り返すと言う単語は影山の中には存在しない。
しかし振り払う、と言う単語もまた存在しなかった。
「とうちゃーく!」
朔夜の言葉にハッとすると、小指を掴んでいた指は離れていき、てまりを抱き上げた朔夜は得意げに言ってきた。
「此処がウチなんだ〜、散歩おしまい」
その言葉を聞き、ポストに目をやると確かに海野、と書かれていた。
何処にでもある様な平凡な一軒家。庭がある分、自宅の方が広いのかもしれないと影山は思っていた。
「てまこ〜お散歩してもらったんだから、お礼しないと駄目だぞぉ〜」
犬相手にそんな風に話しかけているのを見て、影山は黙って見つめる。結局最後まで朔夜が尋ねてくる事は無かった。
踏み込んで来ないのはわざとなのか、話してくれるまで待っているのか。
それとも話さなければ一生聞いて貰えないのか。
「…………」
口を開こうとするが、やはり言葉が出てこない。何を言うのが正解なのか、何を言いたいのか自分の事なのに影山には分からないまま時間だけが過ぎていく。
このままの精神状況で、明日を無事に迎えられるのだろうか。
「……明日」
そんな事を思っていたら、口から出た。明日、と言う言葉が。
声を発した影山自身ですら、小さすぎる声だと思ったのに朔夜はちゃんと聞いていてくれていたらしい。
パァっと目を輝かせながら、朔夜が尋ねてきた。
「明日行く!見に行く !! 」
まるで小さな子供の様に喜ぶその姿を黙って見つめる。
来て欲しくない筈だったのに、今は来てくれると即答してくれた事に安堵を感じていた。
過去は永遠に変わらない。
でも、未来は分からない。