【原作沿い夢小説】オタク+オタク=?【HQ/影山飛雄】
第8章 6ページ目 男だって迷う時は迷うし戸惑う
ジジっとファスナーを閉じながら、朔夜はこっちが本題だったと言う様子で尋ねてきた。影山が危惧していた事を。
「部活どうだったー?パイセン優しい?」
やはり来た、と息を飲んだ。怒らせてしまって入部を認められていない、と言えばいい。事実だけを淡々と告げれば……。
「優しい、と思う」
が、口から出てきた言葉は違った。
無論、優しい先輩と言うのも嘘では無い。
自分達の為の早朝練習に二年の田中龍之介、三年の菅原孝支が付き合ってくれる事になった。
面倒見のいい先輩と言う事は優しい先輩、と言う事だ。
嘘は言っていない。でも、本当の事も言っていない。
何で言えないのか、影山自身分かっていない。
自分の常識だった枠の外に居る朔夜に、どうしたいのかどうなりたいのか。分からない感情が自分を狂わせている。
自分の心の中を、突風が吹いているかの様に吹き飛ばしてくるから。
「もう部活参加してるの?あれ?でも本入部って来週からじゃないっけ?ありっ?」
帰宅部を選んでいるので朔夜の知識は少ないが、最低限の事は分かるらしい。
んー?と考え込む朔夜に影山は言う。
「本格的な参加は来週からだけど、今週も混ぜてはもらえる」
「ほうほう!流石運動部!朝練だ!何時から?」
「…………五時から」
時間を聞き、朔夜はひょー!と飛び跳ねて言う。
「五時!私絶対無理起きられない !! 」
その言葉に影山はホッとしていた。起きられないと言う事は、入部前の早朝練の事を朔夜に知られる事は無い。
知られないと言う事は説明する必要もない。バレー部には正式に入部してから顔を出してもらえば、万事解決だと胸を撫で下ろしていた。
その為、影山は次の朔夜が言った言葉を聴き逃していた。それを聞いていれば、対策が練れたのかもしれなかったのだが。
「五時は無理、だねぇ」
◆