【原作沿い夢小説】オタク+オタク=?【HQ/影山飛雄】
第7章 5ページ目 彼氏と彼女でぷ!
影山から見て小柄である事から歩幅は小さく、すぐに隣に並ぶ事が出来た。
改めて顔を見ようとしたが、影山に見えるのは頭の上で結ばれているお団子頭だけで、顔が見えない。
今まで気に停めた事なんか無かったが、背が低い女子は頭しか見えず、意識しなければ顔を見る事が出来ない事を知った。
(……女子ってこんなに小さい生き物だったのか)
生まれて初めて、影山はそう言う感情を持った。
横を歩いている女子は影山にとって未知の存在のままであり、何なのか分からないと気持ちが落ち着かなかった。
バレーボール以外で、初めて気になる存在。
「ねー」
パッと顔を上げられ、目が合った。
眼鏡をしていて、瞳の色は髪の毛と同じ茶色。影山には美人とか可愛いとか分からないが、普通、と言った所だ。
「今日から部活体験入部始まるよねー。何部?デブ?バブ?モブ?」
後半は何を言っているのか、影山には到底理解出来なかった。ただ、部活の話をしているのだけは分かる。
「……バレー部」
ボソっと呟くと、ケラケラ笑いながらに言われた。
「知ってるー」
「……何で?」
「クラスのオリエンテーションで、言ってたじゃーん」
そう言われ、そう言えば自己紹介で出身中学とバレー部だった事を言った気がしたと思い出した。
自分の事でさえ、気にしていなかったと言うのに、向こうはしっかり聞いて記憶していたのだと思うと、胸の奥がムズムズとしてきた。
眠れなかった事も、この謎の感覚も影山にとって生まれて初めてばかりで、対処が取れない。
他者に無駄に興味を持たずに今まで来たが、同じ様に他者にここまで興味を持たれたのも、初めてかもしれない。
その為には、影山がまず知らなければならない事は一つだけ。
「なぁ……」
「何ー?」
「……名前」
ぼそ、と尋ねるとぽん、と手を叩かれた。そして、背負っているリュックサックからペンケースを取り出すと、影山の手をとって掌に文字を書かれた。
右の掌にデカデカと黒い文字で『うんのさくや』、と平仮名で書かれた。
「はい、名前!」
にっぱにぱと笑顔で言われ、暫く掌を眺めているとパッと先を見て影山は言われた。
「あっ、友達いた!私先に行ってるから!」
そう言うだけ言うと、返事も聞かずに駆け足で走り去って行く。