第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
………コケ……ッコー……………
遠くで一番鳥が鳴いて、夜が完全に明けた。部屋が一段と明るくなっても現実味がなく、夢の中に浸っているようだった。
ぼんやりする頭でひたすら兼続さんを見つめ、眉を寄せて少し怖い顔をしているのは、もっと動きたい欲望と戦っているのだろう。
律動に合わせて揺れる銀糸までも、ため息が出るほど綺麗だ。
「あんっ、兼続さん………」
兼続さんが顔を上げると銀糸が額にぱらりと落ちた。
いつもはさらさらとしているけれど、流石に今は汗に濡れて動きが重い。
「兼続さ、ん………」
好きで胸がいっぱいだった。もう名前を呼びかけるしかできなくて、それをどう受け取ったのか兼続さんの表情がくしゃりと歪んだ。
兼続「舞を傷めつけているのに……好いて、くれるのか…」
私の気持ちが伝わったんだと、妙に安心して目を閉じた。
「は…い」
兼続「好きだ……ただ見ていた時よりも、ずっと……愛している」
(嬉しい………)
「ん……恋仲に、なってくれませんか…?」
目を閉じた向こうで兼続さんはどんな顔をしているんだろう。
嫌な顔をしていないとは思うけど、少し怖い。
兼続「恋仲などぬるい。お前は俺の宝だと言っただろう?
これが連理の契りであったなら、どれほど良かったか」
聞き慣れていない言葉に目をパチリと開ければ、優しく細められた藤色と目が合った。
「すみません…。れんりの契り?ってなんですか?」
難解な言葉の意味をたずねると、兼続さんは腰の動きを止めて残念そうな顔をしている。
なんだかこの言葉を理解できなかったのがとても申し訳なくて、とても勿体ないことのように思えてならなかった。