第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
(兼続さんだったらまっすぐこの部屋に入ってくるはずだよね)
足音に通り過ぎて行って欲しいような、部屋に入ってきて欲しいような、でも不安だけが大きくなっていく。
この暗さであれば例え押し入れを開けられたとしても手前には視界を遮るように布団が置いてあるし、頭から布団類をかぶっていればば同化して見えないだろう。
(この部屋で布団を敷こうとしない限り大丈夫……)
自分に言い聞かせ、息を殺して待っている間、緊張で耳の奥がドクドクと脈打っていた。
「っ」
通り過ぎるかと思いきや、足音がピタリと止まり襖がすっと開いた。
(部屋に入ってきたってことは兼続さん……?)
喜んだのも束の間、ドスンと座りこむ音に息を飲んだ。
(兼続さんなら真っ先に押し入れを確認してくるはずなのに、こっちに来ない…)
しかも座り方が荒々しく、どうにも兼続さんらしくない。
まさかと胸の前で両手を握りしめた。
男「くそっ、女がどこにもいないじゃねぇか!
屋敷の外に女を避難させたって話、本当だったのか」
知らない男の声に心臓が跳ね、みるみるうちに四肢が冷えていく。
(兼続さんじゃない!)
女性を探し求めている男が、休憩のために偶然この部屋に入ってきたようだ。
(そのうち兼続さんが戻ってくるはず。
落ち着け、落ち着け……)
静かな室内に男の荒い息が聞こえ、怖くなって頭から丹前をかぶった。
少し休むために来たんだったら、すぐに出ていくだろう。
緊張が続いてキーンと耳鳴りがした。
男「自分で処理しても駄目、女はいない。
出しても出しても酷くなるばっかで、どうしたらいいんだよっ」
(え……?出しても、余計酷くなる…?)
単純に出せば良くなるものだと思っていた。
出して酷くなるとはどういうことだろう。
もっと詳しく聞きたくて丹前を引きおろした。
男の悪態をとりまとめると射精しても気持ちがいいのは一瞬で、すぐさま欲望が湧き上がってくるという。
自慰の射精で満足感できないなら女性を抱けばという発想で、男達は血眼になって女性を探しているらしい。
女性を探すのを諦めた人達は男同士でしているというから、この屋敷は本当に酷い状態のようだ。