第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
「いたっ」
兼続「謙信様をそんな乱暴な手つきで抱き上げるな。
抱き上げる時はこうだ」
「え、こ、こう…?」
兼続「はあ、駄目だな。もっと愛情をもって接しろ」
「くっ、悔しい。これならどう?」
兼続「そんなにべたべた触ったら謙信様が気持ち悪いだろうが」
「む~~~、じゃあ、こんな感じで…」
兼続「馬鹿、どうしてそんなに雑なんだ。
もっと優しくだ、もう1回!」
「優しくしてますよ!」
兼続「してない。俺の手つきと全然違うだろう」
「同じに見える…」
兼続「ふっ……」
「あ、なにその勝ち誇った顔っ!」
少し空いた襖の隙間から、謙信がその様子を見て笑っていた。
謙信「俺の周りには小さな幸せがあるか…。
この光景もまた幸せなのだろうな」
だが、と謙信の目に物騒な色が浮かぶ。
すぱんっ!!
「えっ!?」
謙信「男の部屋で何をやっている?」
「や、ちょっと誤解しないでください。
ぬいの扱いを教えてもらっていただけですっ」
謙信「それならば俺に聞けばよかろう?
舞にどうしてほしいかは、俺が1番知っている」
「う……。
(兼続さんに聞きに来たんじゃなく、ぬいを落としてここに居るって言えない…!)」
兼続「ふっ、精進がたりないな」
「うぅ……。
(確かに兼続さんの方がVIP待遇だったから何も言えない…!」
主従に苛め抜かれた昼下がり
日向に置かれた梅の花が
賑やかな私達を見守るように、静かに花開いた
END