第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
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媚薬に溺れた夜から1ケ月が過ぎた。
花粉症の時期はとっくに終わり、季節は爽やかな風が吹く初夏に移ろうとしていた。
あの夜、媚薬を盛って父と祖父が処罰を受けたというのに、懲りもせず孫娘達は謙信様の部屋を訪ねてきたらしい。
媚薬に苦しむ謙信様を助けるという大義名分をかざし、したり顔で部屋を訪れた孫娘達が耳にしたのは、謙信様に情熱的に愛されている私のあられもない嬌声だった。
いくら時が経とうと終わらない睦み合いに、孫娘達は戦意喪失して、謙信様と私の仲を邪魔することはしないと周囲に漏らしているそうだ。
思いがけずニセモノの恋仲をまっとうし、春日山に戻った私はびっくりするくらいの報酬を受け取ったのだった。
佐助「現代に帰る?」
「うん。何も取り柄がないのに居座り続けるのも心苦しくてさ。
戦国時代を満喫したし、そろそろ帰ろうかと思うの。
前に、今くらいの時期にワームホールが開くって言ってたよね?場所と時間を教えてくれる?」
佐助「待って。ストップだ、舞さん。
君が現代に帰ろうとしていることを謙信様は知っているの?」
「まさか。私と謙信様は顔を合わせる機会だってないんだから知るわけないでしょう?」
あの夜の翌日、春日山城まで一緒に帰ってきて以降は一度も会っていない。
予想はしていたけれど好きでもない私を抱いたことを後悔しているに違いなかった。
故意に避けようとしない限り1ケ月丸々顔を合わせないのは不自然だったし、あの夜以来、酒宴が何度も催されたけれど私だけ招待されなかった。
少し惨めな気持ちはあるけれど、謙信様を助けられたと思えば悔いはなかった。
役目を果たし、恩を返せた。これを機に現代に帰ろうと思った。