第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
そんな折、飄々と現れたのは……
佐助「謙信様、すみません。何かありましたか」
幸村「今更来たのかよ……てっきり佐助だと思ったんだぞ」
佐助「……?」
兼続「刀を打ち合う音がしたが、謙信様の代わりに佐助が静華様に斬りかかっているのだと思っていた。ところが佐助ではなく曲者だったというわけだ」
無表情な口元が、わかりにくく和らいだ。
佐助「っ!それは……良かったですね、静華さん」
「この間佐助殿が作ってくれた『りにゅーある版すぺしゃるめにゅー』のおかげですっ!」
まったく空気を読まず手を握り合って喜ぶ二人に、幸村と兼続は颯爽と部屋を後にした。
謙信「佐助……りにゅう…なんとやらとは何の話だ?」
地を這うような低い声に佐助と静華がピシリと固まった。
謙信「俺の知らぬところで二人で何をしていたのだ?まさかまた佐助に身体を弄(まさぐ)られたのではあるまいな?」
「そ、そんなことないです!」
佐助「静華さん、ごめん。離脱しますっ」
「あ、佐助殿、ずるいっ!」
『にんにん』と妙な言葉を残し、佐助が姿を消した。
「謙信様が心配することは何もございませんよ?」
謙信「……あれ程男と二人きりになるなと言っておいたのに、仕置きだ」
素早く刀を取り上げられ、静華は壁に押し付けられた。
謙信「仕置きだ。今日は立ったまま抱いてやる。そこに手をつけ」
「え?曲者を捉えたのに仕置きですかっ!?」
謙信の手が静華の帯を解きにかかる。
謙信「男と二人きりになった罪のほうが重い。覚悟しろ?」
「えぇ……ひどい~~~」
謙信がとびきりの隠し刀を持っているのを知っているのは身内のごく少数の人間と、彼女に討ち取られた者だけだったという。
「謙信様……あなたを残して死なないように、もっと私を強くしてくださいませ?」
謙信「…ふっ、可愛いやつだ。愛している、静華…」
「私も愛しております、謙信様」
戦狂いの謙信が愛した、静華姫…。
後世には名前の通り淑やかな姫として名を残したが、真実の姿は……
「謙信様っ!佐助殿と山に鍛錬に行きませんかっ?幸村様がお弁当を用意してくれるそうですよっ」
謙信のために強くあろうとする、日ノ本一の最強の姫だった。
END