第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
佐助「このあいだ春日山付近にワームホールが開いたから、ちょっと現代に行ってきたんだ。はい、お土産」
「いいの?ありがとう」
科学技術では実現できていないタイムスリップ現象を、まるで『ちょっと隣町に行ってきた』くらいの気軽さで佐助君は言った。
風呂敷包みを開けると石鹸や歯ブラシ&歯磨き粉など、戦国時代で暮らしている現代人には喉から手が出るほど欲しい物が出てきた。
現代では当たり前の品でも、戦国時代のお茶屋さんの卓に乗っていると高級品に見えてくる。
「歯磨き粉!!嬉しいよ、佐助君!」
懐かしいチューブ型の品を手に取り、感動する。
今の私には高級ジュエリーより歯磨き粉の方が嬉しい。
佐助「どういたしまして、兆候が表れたのが直前だったから君を呼びに来る暇がなかったんだ。
今度は一緒に里帰りしよう」
「うん、ぜひぜひ。ところでこの包みも開けて良いの?」
手の平サイズの細長い紙袋には、棒状の何かが入っている。
佐助「それは耳かきだ。地味な存在だけど、この時代に耳かきはないから買ってきてみた。
一度自作してみたんだけど、その絶妙なカーブと細さのバランスが難しくて諦めたんだ」
開けてみると、白いふわふわの梵天がついたオーソドックスな耳かきが入っていた。
「ありがとう。これを見たら耳がかゆくなってきちゃった」
佐助「それは良かった。帰ったら早速使ってみて」
「うん!」
佐助君からのお土産を抱え、私はホクホク顔で安土城へ帰った。