第23章 不香の花(謙信様:誕生祝SS2023)
「広い広いこの世界で謙信様に会えて、私は幸せ者です。
生まれてきてくれてありがとうございます」
この世界どころか時系列も無視した出会いは奇跡だった。
謙信様と視線が合い、幸せがこみあげてくる。
(出会いも奇跡だけど、この方が生まれてきてくれたことも奇跡だ)
愛してる。大好き。もっとそれ以上に想っているけど伝えられない。
謙信「7度目の祝いの言葉だな。ありがたく受け取ろう」
謙信様の笑った顔が眩しくて目を閉じた。
たくさんの口づけは触れる度に愛しい、愛していると伝えてくる。
だからお返しに口づけの雨を降らせると、謙信様の肌に淡いピンクの花が咲いた。
「謙信様…ずっと傍に……」
二人の道先を祈るうちに、花の数は花束のそれよりも多くなり、白い肌に咲き乱れることになった。
冬桜も終わった頃に咲いたこの花は、私だけが咲かせることを許された愛の花。
(私の気持ち、少しは伝わった?)
夢中になって口づけしていた顔をあげると、ほんのりと頬を上気させた謙信様と目が合った。
謙信「俺は舞に愛されているのだな」
照れながら抱きつくと、謙信様に抱きしめられた。
謙信「舞の存在こそが、天よりの授かり物だ。
何度でも共に生まれた日を祝おう、愛している」
「ふふ、愛しています、謙信様」
(謙信様、生まれてきてくれてありがとう)
謙信様の温もりに包まれながら、私は8度目のおめでとうを贈った。
END