第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
女「そんでなさぁ、いいもん食えばいぐなるがと、まま炊いて、えんれぇ立派な魚もらってきてこさえてやったのに、『こったにかれねえじゃよ』ってよ、はあもう面倒だって、あだまふったらいでやった」
「ぷっ……ふふふふ!!」
こらえきれなかった笑いは、次第にアハハ!という大きな笑い声に変わった。
安土城で見たことのない大笑いに、信長は面白くなさそうに政宗を振り返った。
信長「政宗。あやつが何故笑ったのかわからん。
何がおかしい?あの女はなんと言ったのだ?」
政宗が通訳している間にも二人は言葉を交わしては楽し気に笑っている。
だいたいの内容を聞いて信長はというと、
信長「こんな阿呆な会話を隠語だと思って警戒していたのか。くだらん」
と、隠れるのをやめて立ち上がった。
走り回る子供たちをものともせず、悠然と舞のところへ…。
「の、信長様っ!と政宗っ!?ど、どうしたんですか、急に!」
舞は目を丸くしていそいそと立ち上がり、信長を迎えた。
そして信長が口をきこうとしたのだが、威勢の良い声に遮られた。
女「いんやいんやあ~~、たまげだな。
まんつまあ、わあのままだば日ノ本でいっちばんだども、あんだらも負けねぇぐらいおどごぶりいいなぁ」
「あ、いえ、この方はその、えー-、とても偉い方なので、少し『シー』です」
女「ほんだのか?」
信長「………」
しどろもどろに止めようとする舞と商人を、信長は冷たく見下ろした。
能天気な舞だが、さすがにこの冷めた眼差しに、『何か悪いことでもしただろうか』と身体を小さくした。