第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
ごみ焼き場から分けてもらった木材がパチパチと音をたてて燃えている。
火が燃え、はぜる音は聞いていると何故か安心する。
柔らかいオレンジを見つめながら、クリスマスソングを口ずさむ。
この時代では佐助君と私しか知らない歌だ。佐助君は今頃越後に居るだろうし、私は安土だ。
クリスマスを一緒に楽しむ人は居なくて、1人で庭の片隅で焚火をしている。
「~~クリスマス♪~~♪~~♪」
懐には複数のクリスマスカードが入っている。
真っ白な紙で作ったので色合いが寂しいのがちょっと不満だ。
曲を変え、リズミカルな音楽を歌っていると胸のつかえが薄れるようだった。
「~~~~♪~~~~♪」
12月になるとどこに行っても流れていたクリスマスソング。
胸が弾むような曲や、賛美歌のようなもの、恋の歌だってあった。あれほど繰り返し聞いていたのに歌詞を知らない曲もあって、現代に帰ったら歌詞を確認したいなあと呑気に思う。
クリスマスソングを聞いて勝手に胸をときめかせ、街の雰囲気に浮かれて友達と笑い合っていた。
家族と一緒に過ごしていた時は、ケーキにのっているサンタさんやチョコレートの家をとりあって、いつもより豪華なご飯を食べて、プレゼントを交換して……
でも今は、鈴の音を響かせたクリスマスソングも、ツリーも、家族も、友達とも離ればなれになってしまった。
クリスマスを祝う概念さえない、戦国時代に身を置いている。
「っと、いけない、いけない」
滲んだ涙をごしごしと拭いた。
皆が知らないなら私だけでも楽しんじゃおうと、1人クリスマスを企画したんだから泣いてなんかいられない。
この焚火が終わったら、部屋に帰ってツリーや雪だるま、靴下の形をしたお手製おからクッキーを食べるんだから。