第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
(ちょっ…え?ちゃんと聞こえたけど、今、何て言ったっ!?)
光秀さん以外の人が言ったらセクハラ確定のお願いだ。
おいしい展開…いやいや…おかしな展開に頭を抱えた。
「け、謙信様に頼めば良いじゃないですかっ!」
光秀「あの軍神が素直にうんと言うと思うか?」
「…言わないでしょうね」
光秀「だろう?なら頼むぞ。日焼けなど気にしないと言ったのに、舞が全部塗れと言ったんだから、責任を取ってもらおう」
「わかりました」
薄く笑った顔はめちゃくちゃ格好良いのに、物凄く意地悪に見えたのは錯覚だろうか。
仕方なく日焼け止めの容器を受け取り、背後に回った。
露わになった背中が白くて眩しい。
(筋肉が凄い……)
肩甲骨や背骨がぷよぷよお肉で隠れているお父さんとは全然違う。
「……‥……」
心を無にして日焼け止めを手にとって、塗っていく。
硬い感触ながら弾力がある。
光秀さんが刀を振っているところを見たことはないけれど、きっと力強く、柔軟な動きをするんだろう。
手の平に多めに出したつもりだったのに全然足りなくて、もう一度容器を傾けた。
(光秀さんの背中……広いんだなぁ)
自分との違い、家族との違いに、『男の人なんだなぁ』とドキドキした。
「背中終わりました」
首の後ろにムラがあったので軽く伸ばしてあげた。
「言い忘れましたけど、耳も塗っておいたほうが良いです。ついでに塗ってあげますね」
私も後で塗らなくちゃと小さく呟いた。
光秀「耳?」
「そうそう、日焼けすると地味に痛いらしいですよ」
少量を手にとり耳全体に塗り、最後に耳たぶで完成だ。
「はい、おしまいです。お疲れ様でした」
光秀「お疲れ様はお前だろう?ありがとう。礼と言ってはなんだが…」
(ん?)
光秀さんの手がスッと伸びてきて日焼け止めを取り上げられた。
持って行かれた日焼け止めを目で追いかけると、光秀さんと目が合った。
光秀「舞にも塗ってやろう」
(塗るって…日焼け止めを、私にっ!?)