第12章 姫と一緒に帰還したのは…
?「奇跡的に再会できたら教えてやる。良いから思い浮かべろ、お前の愛しい男のことを」
促されて目を閉じた。
私の手をとって笑うあの人の顔を。
思い浮かんだらワームホールの中だということも忘れ、笑みが浮かんだ。
(もう直ぐ…もう直ぐ会いに行くからね)
?「頃合いだ。手を離すぞ、団子女」
(団子女ですって?)
幸村のイノシシ女に次ぐ失礼な呼び名だ。
目を開けて睨むと、青白い顔に微笑が浮かんでいた。
?「せいぜいその命を燃やして生きろ」
神経質そうな白い手が離れ、私は支えを失って体勢を崩した。
「あなたこそ!人にばっかり言っていないで生きなさいよっ!
先に死んだらお団子食べながら笑ってやるんだから!」
?「………」
離れていく白い影が何か言っていたけど、それを聞きとる間もなくワームホールから抜け出た。
「わっ!!?」
まともな重力を受けてドサっと着地した。
そこは私が良く知る場所で、待っていた彼がおかえりと迎えてくれた。
普段は微塵も動揺しない人なのに、私の姿を見たら目を丸くして驚き、喜んでくれた。
居ない間ずっと待っていたと言って抱きしめてくれた。
「ただいま!ごめんね、急に居なくなって。
うぅ、私も凄く会いたかった!もう、どこにも行かないよ、絶対!」
強制的に現代に戻された原因は佐助君もわからず、そのままになってしまったけど、それ以来現代に戻されることはなかった。
大好きな人の傍で、支え支えられ生きている最中(さなか)、時々あの男の人のことを思い出した。
にくたらしい彼と再会するのは、もう少し先のことだけど、そうとは知らず私は愛しい人の手を強く握った。
「ずっと一緒にいるね、大好きっ!!」
END