第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
家康「………なんかその鳥、舞みたい。
『秀吉さん大好き』って言ってる気がする」
「チャ!チャ!(そうだよ!家康!)」
秀吉「この間光秀にも言われた。だが人が鳥になるなんて、お伽話じゃないんだからありえないだろう」
「チャチャッ(ここに実例があるよ~)」
秀吉「なんだお腹がすいたのか?今、餌を運ばせるから待っていろ」
「チャ……」
伝わらなくてもどかしすぎる。
家康「にしてもその鳥、一日中一緒なんですか?」
秀吉「ああ。一度部屋において出ようとしたら羽が抜けるくらい暴れたんだ。
それからはこうして肩に乗せている」
家康「ふーん……」
そう。鳥になって良い事といえば、仕事中の秀吉さんを四六時中、遠慮なく見ていられることだ。
肩に乗っているから温もりが伝わってくるし、仕事にひと段落すれば少しの時間でも遊んでくれる。
一日中秀吉さんと一緒に居られるのは嬉しい。
『あれ…そういえば』
ふと、鳥になる前夜の会話を思い出した。
秀吉『俺は戻るから、このまま舞は寝るんだぞ』
『…もっと秀吉さんと一緒に居たいな』
酔っぱらっていた私はいつも我慢していた本音を言ってしまった。だけど、
秀吉「俺も一緒に居たいが、今夜は客人が大勢いる。また今度な?」
そう言って秀吉さんは戻って行ってしまった。
寝支度をしながら『秀吉さんと一日だけでも良いからずーっと一緒に居たいな』って呟いたっけ……。
『もしかしてずっと一緒に居たい、なんて言ったから鳥になっちゃったのかな』
一緒に居られるけど秀吉さんには心配をかけているし、それに数日経ってしまっている……。
「チャ……チャチャチャァ……(どうやれば元に戻るの?!)」
家康「その鳥、よっぽどお腹がすいているんですね。ソワソワしてる」
向こうからお米のお皿を持った女中さんが歩いてくる。
「チャ!(違うよ、家康!)」
食い意地が張っているみたいに言われて家康に抗議する。
秀吉「可愛いだろ?」
家康「はいはい」
「チャ……(違うのに、もう)」
硬いくちばしで秀吉さんの肩をツンツンしてやった。