第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
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光秀「さぁ、いくぞ」
「いくぞって…、ひとりで馬に乗ったことがないんですけど!」
光秀「大丈夫だ、すぐ慣れる」
「慣れません!落ちて死んだらどうしてくれるんですか?!
初めての遠出なのに、ひどい…。政宗様の馬に乗れたなら俺の馬に乗れるだろうみたいなことを仰(おっしゃ)っていたくせに」
光秀「そんなに一緒に乗りたかったのか。恋仲でもないのに積極的な女だな」
「な……!安全面を考慮してですからね?誤解しないでください!」
人が大勢いる所では相変わらず鋼の姫を演じている舞だが、二人きりの時は思っていた通りの素直な性格を出してくれる。
俺にだけ見せてくれる素顔が愛しいと、まだ伝える仲ではないが、すぐに言えるようになるだろう…。
舞の姿を見ているだけで心が苦しくなり、
声を聞けば、もっと聞きたくなり、
笑った顔に、その頬に口づけしたいと思う。
その髪に、肌に触れたい。
俺の我慢も限界だ。
だから夕方ここへ戻って来る頃には
恋仲になっていて………くれるか?
END