第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
(第三者目線)
こうして舞との時間を獲得した謙信だったが……
謙信「舞、こちらへ、いや、駄目だ、俺の膝の上にこい」
「それは困ります。お部屋にお招きいただいただけでも畏れ多いのに…」
謙信「とにかくそこは危険だ。もっとこっちへ」
「ですが……」
舞が追い詰められた表情で、眉を限界まで下げている。
その困惑を横から断ち切って、スッと菓子が出された。
信玄「そうだぞ、恋仲でもないのに膝の上に乗せるやつがいるか。
舞、図々しい男は放っておいて、これを食べたらどうだ」
「わ、三色団子……いただいて良いんですか?
ん~、美味しい!春と言ったら三色団子ですね」
さっきまでの困り顔がコロリと笑顔に変わったのを見て、謙信の眉間に皺が寄る。
幸せそうに口を動かす舞に我慢ならなくなり謙信は信玄に詰め寄った。
謙信「信玄、どうあっても不正を認めないつもりか」
信玄「不正があったと証明できるなら、それは不正があったってことだろう。
だがお前は不正をあきらかにできなかった。
なら俺はここに居る権利がある。今日1日お前の傍を離れられないのは苦痛だが、姫が一緒なら幸いだ」
城への帰り道、信玄は謙信に「4」とかかれた棒を手渡した。佐助が現代から持ってきた鉛筆で書かれており筆跡も間違いなかった。
驚く謙信を前に『お前と半日とは嫌で嫌で仕方ないが命令なら仕方ないよな~』と信玄は爽やかに笑った。
信玄を知る者なら、その笑顔の奥に黒も黒、真っ黒な腹の中が見えただろう。
謙信「佐助さえ見つければ証明できたものをっ!」
信玄「さーて、どこに行ったんだろうな?」
信玄が引いた『1』の棒と佐助が予備にもっていた棒の中から『4』を交換するかわりに三つ者のからくり屋敷に招待すると言ったら佐助は喜んで出かけて行った。
佐助が積極的に不正に協力したのはからくり屋敷招待券が魅力的だったのもあったが、ひとえに謙信と舞を二人きりにするのが心配だったからである。
証拠を持っている佐助の不在により、謙信は不正を明らかにすることは出来ず、こうして悔しがっている。